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漫画『宇宙兄弟』星加正のモデル役・上垣内茂樹さん講演会開催

漫画『宇宙兄弟』星加正のモデル役・上垣内茂樹さん講演会開催

2023.11.10

その他

前回の「中川翔子さんトークショー」に引き続き、人気漫画『宇宙兄弟』に登場する星加正のモデル役にもなった上垣内茂樹(かみがいちしげき)さんによる講演会が、串本町文化センターにて開催されました。講演会では、人類の宇宙開発の歴史や、ISS(International Space Station=「国際宇宙ステーション」)、宇宙での生活などについて、クイズを交えながらお話しいただきました。イベント後半では、今年7月に行われた「スペースキャンプ」の参加者が感想を発表。「スペースキャンプ」とは、世界各国の青少年を対象に、アメリカ・アラバマ州の米国宇宙ロケットセンターで実施された宇宙に関する体験学習プログラムで、日本からは串本町内の中学生4名が選ばれ参加しました。

【上垣内茂樹さん|プロフィール】
1982年、現在のJAXAの前身であるNASDAに入社。ロケットエンジンや人工衛星の開発等を担当する。その後、日本人宇宙飛行士の選抜や訓練、ISSの国際調整など、長年に渡り有人宇宙開発の推進に尽力。日本初の宇宙飛行士として選ばれた毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さんなど、名だたるメンバーの訓練を担当してきた。2019年にJAXAを退職し、現在は公益財団法人日本宇宙少年団の理事として次世代の育成に携わっている。

|第一部:上垣内茂樹さん講演|

日本人初の宇宙飛行士を訓練

1961年、あの有名な「地球は青かった」という言葉でも知られる、ロシア(旧ソ連)のユーリイ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行を達成しました。上垣内さんがNASDAに入社したのは、それから21年後の1982年。まだ日本人の宇宙飛行士が誕生する前のことです。当時はロケットエンジンや人工衛星の開発などを行っていた上垣内さんですが、入社4年目の頃に日本人初の宇宙飛行士を採用することが決まると、彼らの訓練担当として上垣内さんに白羽の矢が立ちました。日本では誰も経験したことのない宇宙飛行士の訓練。自分で作成した訓練プログラムを自ら受けるなど、手探りで試行錯誤を繰り返しながらノウハウを蓄積していきました。こうした経験から、上垣内さんは人気漫画『宇宙兄弟』で、情熱のあるJAXA職員として描かれている星加正のモデル役にもなっています。

宇宙開発の歴史とISS

(C)NASA/JAXA(https://humans-in-space.jaxa.jp/iss/about/config/

宇宙に飛び立った宇宙飛行士は、主にISS計画に則り宇宙環境を利用した様々な実験や研究、天体観測などを行います。宇宙空間に浮かぶISSは、もし地上に置くとすると、大きなサッカー場が必要になるほどの大きさだといいます。ISS計画の参加国は、アメリカ、ロシア、日本を含む15か国。各国が別々のパーツを担当し、製作したものを宇宙空間で組み立てています。日本は「きぼう」と名付けられた実験室を担当しました。上垣内さんによると、特に大切な役割を果たしているのは、ロシアが担当している部分。アメリカの担当部分と比べると、サイズとしては少し小さいものの、ISS全体の軌道や姿勢を変える際の制御をつかさどる大変重要なパーツなのだそうです。

ISSは地上から肉眼で見ることができます。インターネットで「きぼうを見よう」で検索すると、観測できる予測日時を調べることが可能。また、Googleマップのストリートビューを使って、ISSの内部を見ることもできます。興味のある方は、ぜひのぞいてみてください。

講演会では、ろうそくや水を使った宇宙での実験や、歯磨きや手洗い、お風呂などの生活事情、宇宙食の発展などについても紹介されました。(※ISS船内は基本的に火気厳禁のため、ろうそくの実験は人工的に作った無重力状態で実施されています。)

宇宙飛行士に必要な「心・技・体」

「心・技・体」、すなわち「心=仲良くできる、我慢強い精神」「技=勉学や器用さに優れていること」「体=健康な体を持っていること」は、多くの仕事において求められる素養です。特に宇宙飛行士は、人並外れた「心・技・体」が必要になると上垣内さんは話します。

残念ながら、過去には宇宙船の故障によって宇宙飛行士が命を落としたこともあります。それらは、どれほど宇宙飛行士が優れていても防ぎようのない事故だったといいます。だからこそ、機械ではなく宇宙飛行士自身が原因で悲惨な事態が起きることのないように、宇宙飛行士には必要な資質を養うための厳しい訓練が施されています。

講演会第一部の最後は、上垣内さんが最も好きだというサウジアラビアの宇宙飛行士の言葉を引用した後、「宇宙旅行が進み、自分や身近な人が宇宙に行くようになれば、人類全体の考え方が変わっていくんじゃないかなと思います」という言葉で締めくくられました。

|第二部:スペースキャンプ報告会|

報告会では、串本町内の中学生4名と引率教員2名が、「スペースキャンプ」で身に着けていたブルースーツ姿で登場。上垣内さんが聞き役に回り、参加者に話を聞きました。

「スペースキャンプ」で特に印象に残ったことを尋ねられると、串本西中学校の清野さんは「月の重力を体験できる椅子の装置です。日常では体験できないような感覚で、すごく不思議な感じでした」と回答。

また、同中学校の河原さんは、一番大変だったこととして「ミッションで装置を動かす体験をしたのですが、ペアの子が途中で帰ってしまいました。僕はその子の操作を参考にしながら頑張ってやっていたので、本当に焦りました。大人のスタッフに英語で聞きながら、何とかやり遂げることができましたが、それが本当に大変でした」とエピソードを話しました。

これに対して上垣内さんは「ほかの仕事でもそうかもしれませんが、宇宙飛行士の仕事は諦めてしまうとおしまいです。何か困ったり、失敗したと思った時でも、最後まで絶対に諦めずにやり遂げることが、大事なことだと思います」と河原さんの粘り強さを称えました。

宇宙に関する学習や体験の機会が増え、より多くの子どもたちが宇宙への好奇心を持つようになれば、串本町から宇宙飛行士が誕生することも、そう遠い夢ではないかもしれません。